「最近、歩いていると途中で足が痛くなって長く歩けない」
「立ち止まると楽になるけど、またすぐ痛みがつらくなる」
「歩いていると足に力が入らくなる」
このようなお悩みを抱えていませんか?
それは、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の可能性があります。
脊柱管狭窄症は、特に高齢者に多く見られる背骨のトラブルで、足腰のしびれや痛み、歩行困難といった症状が出るのが特徴です。
「テレビで見た」「友達が言っていた」程度の知識では不安が募るばかり。
ましてや、手術の話を聞くと怖くなってしまいます。
しかし、脊柱管狭窄症には手術以外の治療法もあり、適切な対応をすることで症状の緩和が期待できます。
本記事では、病気の正しい理解を深めながら、歩ける日常を取り戻すための生活習慣や治療のヒントをご紹介します。
「病院に行くべきか悩んでいる」
「できるだけ体に負担の少ない方法を知りたい」
という方は、ぜひ参考にしてください。
脊柱管狭窄症の病態
脊柱管狭窄症は、背骨の内部にある「脊柱管(せきちゅうかん)」という神経の通り道が、加齢などの影響で徐々に狭くなり、神経が圧迫される病気です。特に腰の部分で起こる「腰部脊柱管狭窄症」が多く、高齢者の歩行障害の一因として知られています。
「最近、歩いていると足がしびれる」
「立ち止まると楽になるが長く歩けない」
といった悩みを持つ方は多いです。
これらは、まさに脊柱管狭窄症の典型的な状態と言えるでしょう。
病気の背景には、長年の体の使い方や加齢による変化があります。背骨を構成する骨や軟骨、靭帯などが徐々に変性し、脊柱管が狭まることで神経が圧迫されます。その結果、下肢にしびれや痛みが出たり、歩行距離が短くなったりします。
大切なのは、「加齢のせいだから仕方がない」と放置せず、早めに正しい知識を得て、適切な対応を取ることです。進行具合や体の状態に合わせて、治療法は変わってきます。
本記事では、今後この病気の特徴をわかりやすく解説していきますので、ぜひ読み進めてみてください。
脊柱管狭窄症の症状
脊柱管狭窄症は、進行の程度や神経の圧迫部位によって症状の出方が異なります。初期には気づきにくいものの、少しずつ日常生活に支障をきたすケースが多く見られます。ここでは、特に注意すべき典型的な症状と、実際にクリニックを受診する方が抱える悩みを具体的に紹介します。
主なポイントは以下の2つです。
- 神経の圧迫によって足腰の症状が現れる
- 安静時には症状が軽く、動くと悪化する特徴がある
自覚症状があっても「年のせい」と我慢してしまう方が多いため、見逃されやすいのも特徴です。読み進めながら、自分の症状と照らし合わせてみてください。
典型的な症状
脊柱管狭窄症の典型的な症状は、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる状態です。これは、歩き続けると脚にしびれや痛みが出て、しばらく休むと回復するというものです。
「最近、10分歩くと足がしびれる」
「立ち止まると楽になるけれど、また歩くと痛くなる」
といった悩みは、まさに間欠性跛行の特徴を示しています。
この症状は、神経の血流が動作によって一時的に悪くなることが原因とされており、日常生活に大きな支障をきたします。
また、脚のしびれや力が入りにくくなることもあり、放置していると歩行困難や転倒のリスクが高まるため、早めの対応が重要です。
特に、腰を反らす動作で症状が強くなり、前かがみになると軽くなる傾向があるのも特徴の一つです。これは、腰の角度によって神経の圧迫が変わるためです。
実際にクリニックを受診する方が多い症状
整形外科の現場で脊柱管狭窄症を疑って受診される高齢者の多くが、「最近歩くのがつらくなった」「台所に立っていると足がだるくなる」「長く立っていられない」といった日常動作に関する症状を訴えています。これは、典型的な間欠性跛行に加え、生活の中で支障を感じ始めたサインとも言えるでしょう。
特に多いのが以下のような訴えです。
「数分の買い物ができなくなった」
「信号が変わる前に横断歩道を渡りきれない」
「足に力が入らず、転びそうになる」
これらの症状は、加齢だけでは説明のつかない異常であり、神経の圧迫によるものである可能性が高いです。特に初期の段階では「我慢すれば大丈夫」と放置されがちですが、適切な診断と対処を怠ると、症状が進行し、生活の質が大きく低下するリスクがあります。
また、「朝は大丈夫だけど、夕方になるとつらい」「少し休めば回復するが、また繰り返す」といった声もよく聞かれます。こうした変動性のある症状も、脊柱管狭窄症の特徴と理解しておくことが大切です。
日常生活に「ちょっと困った」が増えてきたら、それは体からのサインかもしれません。受診をためらわず、早期に整形外科に相談することが、安心できる暮らしへの第一歩となります。
脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症は、主に加齢に伴う背骨の変化が原因で発症します。脊柱管内にある神経が、骨や軟部組織によって圧迫されることで症状が現れるため、その構造的な変化を理解することが重要です。
ここでは、主な3つの要因について詳しく解説します。
- 椎間板の変性:クッションの役割を果たす椎間板が潰れて、神経を圧迫する
- 黄色靭帯の肥厚:本来柔らかい靭帯が分厚く硬くなり、脊柱管を狭める
- 骨の変形:骨が変形・突出して神経を刺激する
これらの要因が単独、または複合的に関係しながら、脊柱管内を狭くし、神経の圧迫を引き起こします。どの要因が主体かによって治療方針も変わるため、診断には画像検査が重要です。
それでは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
椎間板の変性
背骨の間にある椎間板(ついかんばん)は、クッションのように衝撃を吸収する役割を持っています。しかし、加齢とともにこの椎間板がすり減ったり、潰れたりすることで、本来の機能が失われてしまいます。これを「椎間板の変性」と呼びます。
この変性が進むと、背骨が不安定になり、周囲の組織が補強しようと働きます。その結果、骨のとげ(骨棘:こつきょく)ができたり、椎間板が後方に膨らんで神経を圧迫したりすることがあります。
具体的には、「背中を反らすと痛い」「じっとしていても腰が重だるい」といった症状が現れます。変性は40代頃から始まり、年齢とともに進行するため、高齢者の多くが何らかの形で椎間板の変化を抱えています。
変性そのものを止めることはできませんが、適切なリハビリや体の使い方を見直すことで、症状の進行を抑えることは可能です。
黄色靭帯の肥厚
黄色靭帯(おうしょくじんたい)は、背骨をつなぐ靭帯の一部で、脊柱管の内側に位置し、背骨の動きを支える役割を持っています。通常は薄く柔軟性のある組織ですが、加齢や長年の姿勢・動作のクセなどによって、この靭帯が徐々に厚く硬くなってしまうことがあります。これを「黄色靭帯の肥厚(ひこう)」と呼びます。
黄色靭帯が分厚くなると、すぐそばを通っている神経を圧迫しやすくなり、しびれや痛みなどの神経症状が出てきます。特に、腰部でこの変化が起こると、歩行時に痛みが強くなる「間欠性跛行」や、脚のだるさ、力が入りにくいといった症状が現れやすくなります。
「最近、姿勢を変えると腰がズキッとする」「長く立っているのがつらい」と感じている方は、この黄色靭帯の肥厚が原因の一つである可能性があります。進行すると手術が必要になるケースもあるため、早期の発見と保存療法による対応が大切です。
日常生活の中では、腰を無理に反らさず、背筋を柔軟に保つようなストレッチや軽い運動が予防につながると考えられています。リハビリを取り入れた生活改善が、進行を緩やかにする一助となります。
骨の変形
脊柱管狭窄症の原因として見逃せないのが、加齢に伴う「骨の変形」です。これは、長年にわたって背骨にかかる負担や、椎間板のすり減りなどによる背骨の不安定さを補うために、骨が過剰に成長してしまう現象です。その結果として現れるのが「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるとげ状の突起です。
この骨棘が脊柱管内に突出し、神経や血管を圧迫することで、しびれ・痛み・運動障害といった症状を引き起こします。特に高齢者では、骨の変形が複数の部位で見られることが多く、複合的に神経を圧迫しているケースも少なくありません。
「昔より背が縮んだ」「腰が曲がってきた」と感じている方の中には、背骨の変形が進んでいる可能性があります。さらに、「痛みはそこまでではないが、足がもつれる」「踏ん張れずに転びやすい」といった悩みも、骨の変形による神経圧迫が原因になっていることがあるのです。
このような骨の変化は、日常生活の中で完全に防ぐことは困難ですが、骨密度を保つ栄養の摂取や、無理のない範囲での運動習慣が、進行を遅らせる可能性はあります。また、画像診断による定期的なチェックが、重症化を防ぐ鍵となります。
脊柱管狭窄症の診断基準
脊柱管狭窄症は、症状だけでは他の腰痛や神経の病気と区別がつきにくいため、正確な診断のためには複数の視点から確認する必要があります。診断の基本となるのは、患者さんの訴える症状、医師による診察、そして画像検査の3つです。
診断で特に注目されるのが、「間欠性跛行」の有無です。歩行に支障をきたし、休憩を挟むと再び歩けるという症状があるかどうかが、重要な判断材料になります。また、腰を反らすと悪化し、前かがみで軽快するなどの特徴的な体勢変化も診断に役立ちます。
さらに、以下の検査が診断に用いられます:
- X線(レントゲン)検査:骨の変形や椎間板のすり減りを確認
- MRI検査:神経の圧迫状態を詳細に把握できる
- CT検査:骨の状態を立体的に評価
特にMRIは、靭帯や神経の状態を画像で確認できるため、狭窄の程度や神経の圧迫の有無を正確に捉えるのに非常に有効です。これにより、手術の必要性や保存療法の適応など、治療方針を明確に決めることができます。
診断の際には、他の病気(たとえば、閉塞性動脈硬化症や糖尿病性神経障害など)との鑑別も行われます。自己判断では判断が難しいため、気になる症状がある場合は、整形外科の専門医による診察を受けることが重要です。
脊柱管狭窄症の治療方法
脊柱管狭窄症の治療は、大きく分けて「保存加療」と「手術加療」の2つに分類されます。どちらが適しているかは、症状の重さや日常生活への影響度、患者の年齢や体力などを総合的に見て判断されます。すべての人に手術が必要というわけではなく、多くの場合、まずは体への負担が少ない保存的な方法からスタートします。
以下に、2つの治療方法の概要を紹介します。
- 保存加療:薬物やリハビリによる治療
- 手術加療:神経の圧迫を直接取り除く外科的治療。重度の症状や保存療法で改善しない場合に適応
「手術しかない」と思い込んで不安を抱える方も少なくありませんが、実際には多くの患者さんが保存加療で症状をコントロールできています。治療の選択肢を正しく知ることが、安心と納得の医療につながります。
保存加療
保存加療とは、手術を行わずに症状を和らげる治療法のことを指します。脊柱管狭窄症の治療では、まずこの保存療法から開始されるのが一般的です。具体的な内容は、以下のように多岐にわたります。
- 薬物療法:消炎鎮痛薬や神経の興奮を抑える薬を用いて痛みやしびれを和らげる
- 運動療法・ストレッチ:姿勢の改善や体幹の筋力強化を目指すリハビリ
特に、体幹トレーニングやストレッチは、筋肉のバランスを整え、神経への負担を減らす効果が期待できます。ただし、自己流で行うのはかえって悪化させるリスクがあるため、専門家の指導のもとで行うことが望ましいです。
また、テレビ番組『ためしてガッテン』などでも紹介されたように、前かがみ姿勢を取り入れた歩行方法など、実践しやすい工夫も効果的です。保存加療はすぐに効果が出るわけではありませんが、継続によって症状の改善が見込めるため、根気よく取り組むことが大切です。
手術加療
保存加療を行っても症状が改善しない、あるいは日常生活に支障をきたすほどの痛みや歩行障害が続く場合には、手術加療が検討されます。脊柱管狭窄症の手術は、神経を圧迫している要因(骨や靭帯など)を取り除くことで、症状を軽減させることを目的としています。
代表的な手術方法には以下のようなものがあります。
- 除圧術:狭くなった脊柱管の空間を広げて、神経の圧迫を解除する
- 固定術:背骨の不安定さがある場合に、自身の骨、金属などで骨を固定する
これらの手術は、近年では内視鏡を用いた低侵襲手術(身体への負担が少ない手術)も可能となり、高齢の方でも安全に受けられるケースが増えています。
とはいえ、手術には当然ながらリスクや回復期間も伴います。「術後しびれが完全には取れなかった」「思ったより痛みが長引いた」などの声がある一方で、「手術してから歩ける距離が伸びた」「生活が楽になった」という前向きな感想も少なくありません。
重要なのは、自分の症状と生活のバランスを見極めたうえで、信頼できる医師と相談し、納得のいく治療を選ぶことです。手術が最善の選択となることもあれば、保存加療を継続するほうが良い場合もあります。複数の選択肢を知ることが、不安を軽減し、前向きな行動につながります。
予防や経過、日常生活での注意点
脊柱管狭窄症は加齢に伴って誰にでも起こり得る病気ですが、日頃の生活習慣や姿勢、運動の工夫によって進行を遅らせたり、症状の悪化を防ぐことは十分可能です。また、すでに診断を受けた方も、日常生活での注意を継続することで、手術を回避したり、良好な状態を保つことができる場合があります。
以下の3点を意識することが、予防・管理の鍵となります。
腰に負担をかけない姿勢を保つ
筋力と柔軟性を維持する運動を継続する
痛みやしびれが強くなる前に医師に相談する
たとえば、長時間の立ち作業や背中を反らすような姿勢を避けることで、神経への圧迫を軽減できます。また、椅子に座るときは背筋を無理に伸ばすよりも、やや前かがみの姿勢をとる方が楽になる方が多いです。
運動面では、ウォーキングや体幹トレーニング、ストレッチが有効です。ただし、「無理なく継続できる範囲」で行うことが重要で、強い痛みを我慢して続けるのは逆効果になることもあります。特に、テレビやインターネットで紹介されている運動法は、自分に合うかどうかを医師や理学療法士に確認してから取り入れましょう。
また、症状が軽くなったと感じても、再発するケースもあります。少しでも「おかしいな」と思ったら、自己判断せずに早めに受診することが大切です。継続的な管理と医療機関との連携が、快適な日常を保つための支えになります。
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